エッセイ

2016年を深刻に振り返る

2016年を深刻に振り返る

要約:「経験する自己」としては充実した幸福な一年で、「記憶する自己」としては残念で悔しい一年だった。言い換えると、総じて楽しい日々を過ごした一方で、目標(海外の大学院に留学する)を達成できなかった。

詳細:(以降は有閑な方がお読みください)

続きを読む

【2016年アメリカ大統領選挙の感想】


 今回のアメリカ大統領選挙については、「トランプの言ってることが無茶苦茶だし、流石に今回はヒラリーだろ…」と思っていました。なのでアメリカ大統領選挙に共和党のトランプが当選したことには私も不愉快な気持ちになりました。

 私たちの多くがトランプの当選に衝撃と不快感を覚えたのは、アメリカ合衆国の大統領はアメリカ合衆国民を体現する存在であり、同時に全世界の指導者でもあると無意識に私たちは想像していて(その理由は、アメリカ合衆国が一つの国家であると同時に一つの世界システムでもあるからでしょう)、後者の象徴として相応しいとは素直に感じられない人物が民主的に選出されたことに困惑したからなのだろうと考えています。

 今回の選挙では、(1)(州全体の勝ち負けに関係なく)大都市の選挙区はヒラリー勝利、(2)(州全体の勝ち負けに関係なく)農村部および中小都市の選挙区はトランプ勝利、という投票結果を示しました。結局、グローバル市場の恩恵を感じられない(または実際に恩恵を受けていない)人が「世界の発展?知るか。俺たちの生活(=俺たちにとっての世界)を何とかしてくれよ、くそったれ」と、投票行動によって現状に異議を申し立てたとみなすことができるのでしょう。これはBrexit国民投票におけるイングランド地方の投票結果(ロンドンは残留、他全ての地域は離脱)と軌を一にします。

 なお、「アメリカ合衆国民の多様性と複雑性を把握することは本当に可能なのだろうか」という点については、私は疑問を覚えています。というのも、アメリカの外にいる私たちが見聞するアメリカはそもそも国際的で(メディアでも人々でも)、アメリカの中で暮らすアメリカ人はそもそも私たちのフィルターに入ってきません。住む世界があまりにも違うので、彼らと接することはありません。Facebookのフィードも来ませんしね。会うことのない他者に対する無知と偏見を解消することができるとは、私は素直に思えずにいます。

 最後に、トランプの当選後に、あるFacebookの投稿(友人のアメリカ人夫。オハイオ州出身)を読み、「現在、アメリカの農村部および中小都市ではそもそも生活向上のための努力を続けることが難しく、たとえ本人はできる限りの努力をしたとしても、その苦境から抜け出すことは困難である」ことが感じられ、悲しくなりました。また、「アメリカ各地の"Diner"(アメリカにおける地元の食堂)を巡って、アメリカ人の本音を聞く」というドキュメンタリー番組を観て、農村部や中小都市ではトランプ支持者が大半であること、また支持政党に関係なく、アメリカ人の多くが「現在の苦境から決して抜け出せない社会構造に絶望し、反旗を翻そうとしている」ことがよく分かりました。当然、大統領選挙が終わった後の理解ではありますが、こういう人たちがアメリカのいたるところに暮らしているのなら、トランプorサンダースが熱狂的な支持を集めたのも十分理解できました。

【映画『聲の形』 の感想】

(はじめに)
・作品『聲の形』の存在は知っていたものの、原作(漫画)を読んだことはありません。作中のいじめ描写が残酷と聞いており、小学校から高校までの自分過去の不手際を思い出し、辛い気持ちになることが予想されたので。
・現在、聴覚障碍を持つ仕事の同僚が2人おり、うち1人とは朝から夕方まで主に無駄話をしながら仕事をしています。聴覚障碍者との交流体験を得ることになり、またその人から『聲の形』を紹介されたので、観ることにしました。

(全般)
・聴覚障害やいじめもあるけど、未成熟な人同士の意思疎通や交流が主なテーマの作品でした。
・思ったよりマイルドな作りでした。監督(山田尚子さん)と脚本(吉田玲子さん)の個性でしょう。もっとシビアな仕上がりにもできたはずです。
・聴覚障碍者の硝子(ヒロイン)による話し言葉はなかなか聞き取ることができないのに、書き言葉は完全に理解できることに将也(主人公)も驚いていた場面は自然でした。これは私も聴覚障碍者との会話で驚いたことの一つです。
・手話教室の最中に植野(主要キャラクター)が、「私は筆談でいいんですけど」と反発する場面があります。確かに手話より筆談が手っ取り早く意思疎通を図ることができることは同僚との会話で理解したので、彼女の主張も理解できます。ただ彼女の本旨はそもそも免疫のない他者を拒絶するための方便ではありますが。
・植野が硝子に対して「私はあんたのことが嫌い」と言い放つように、他人にはっきり「嫌い」と表明することがめっきり減ったなと振り返りました。嫌いな人ができるよりは好きな人ができるほうが楽しく過ごせるので、今では人を嫌いになるよりは好きになることの方が多いし、嫌いになりそうな人とはそもそも距離を取ります。他人と適切な距離感を取らない、あるいはできないのが「子ども」なのかもしれません。それこそ大学生の頃まで、自分自身も当然そうだったと思います。

(個別)
・硝子の一言目の演技(「はっ」という驚きを込めた息)が素晴らしかったです。
・硝子の自殺未遂後に、ゆづる(硝子の妹)が「私の監督不行き届きで…」という場面で、ゆずるが硝子保護を自己アイデンティティにしてきたことがよくわかります。直前の場面(おばあちゃんとゆづるとの会話)でも伺えます。
・マリアちゃん(将也の姪)、永束(主要キャラクター)、おばあちゃんのおかげで、ただでさえシビアになりかねない作品の雰囲気が和らいでいました。
・美也子(将也の母)と八重子(硝子の母)は、互いの息子と娘の複雑な交流を通じて、最終的には自分たちも友人関係を築いています。自分も大人として、2人が良識的な大人として描かれていることに安堵感を覚えました。
・川合(主要キャラクター)がこの上なく不愉快。主要キャラクターのうち、この人だけが成長していません。自分の加害を自覚せず、自分を常に正義の立場に置いています。自殺未遂後の硝子に対するセリフ(「一人で悩んで死んだらダメ」云々)がキャラクターの性格に合っていて、更に腹が立ちました。ただ不愉快だったのは、昔の自分にも通じる一面があるからでしょう。また彼女をそのように描くことで、子ども社会の関係性を浮き彫りにすることもスタッフの狙いかと思います。

(おわりに)
・感情を強く揺さぶられました。勇気を出して、原作(漫画)も読んでみます。

男性社員の育児休暇取得をどうやって促進させるか

 「男性社員の育児休暇取得をどうやって促進させるか」というテーマのパネルディスカッションを傍聴しました。ライターが内容をまとめていたので紹介します。

  普通の男性会社員が育休を取得してみてわかったこと

 パネルディスカッションの内容も参考になることは多かったですが、パネルディスカッションの前に示された調査結果が私には印象に残りました。「育児休暇の取得を希望する男性社員は、育児休暇の取得を実現させるためにどのような支援を望んでいるか」という質問に対して、最も多かった回答は「育児取得の取得を周囲(特に上司)が促す」でした。給与の全額保証よりも、育児休暇の日数拡大よりも、外部からの圧力を日本の男性社員は必要としていることが興味深かったです。

 実際のところ、男性社員のほぼ全員(特に上司)が育児休暇を取得した経験を持たず、かつ出世レースの結果が入社から約20年間の成果で決まる日本社会の職場において、育児休暇の取得を自分から言い出すことに躊躇する男性社員が少ないのは頷けます。(少なくとも私もそういう職場にいて、こういう状況下で育児休暇を取得を申し出る男性社員が少ないことは理解します。)この状況を変えるには、民間事業者の自助努力だけでは難しく、法整備が必要と感じました。ちなみにパネルディスカッションではこの点についても議論され、男性の育児休暇推進を目的にする超党派国会議員連盟の代表(参議院議員)も「育休を父親に義務的に割り当てるクオーター制、育休中の休業補償を100%にすること、法改正をして有給休暇の取得日数を増やすことなどを視野にいれないといけない」と発言しました。すぐに世の中は変わりませんが、少し期待が持てました。

ナルコレプシーの特徴を自覚する

 
「注意深く観察していれば、レム睡眠時に他にもさまざまな変化が生じることに気づいただろう。まず、呼吸数(心拍数、血圧も)が増加する。それから、性的な反応(男性ではペニスの勃起、女性なら乳頭や陰核の勃起、膣液の分泌など)も見られる。さらに驚くべきは、筋緊張の変化だ。大人の場合、睡眠中に通常、一晩で約40回、自ら意識することなく、姿勢を変える。だが、そうした動きは、レム睡眠中には一切起きない。レム睡眠中には、体は一切、動かないのだ。筋緊張がまったくなく、体は完全に弛緩した状態になる。レム睡眠は、横になった姿勢でないと不可能だ」

 出典:デイビッド・J・リンデン『つぎはぎだらけの脳と心』、インターシフト、2009年、p.250

 ナルコレプシー(私の抱える睡眠障碍)の特徴として、入眠後すぐにレム睡眠が始まることが挙げられます。1,000回以上(誇張ではない。10代半ばからナルコレプシーを発症しているので、3日に1回は症状が現れてきたと仮定しても、120回×15年=1,800回は起こってきた)の経験によって、眠り際に生じる自分の身体的な変化が、上述の分析の通りであると自覚できました。一点だけ指摘するなら、「レム睡眠は、横になった姿勢でないと不可能だ」とあるけれども、立ったままでもレム睡眠が始まることはあります。ただそのときも、筋緊張がまったくなく、体は完全に弛緩した状態になるために、何かに体を委ねていないと倒れてしまいます。

今年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』は良作だった

 今年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』は先週終了。第1回から最終回まで(ほぼ全話)観ました。番組は低い視聴率に終わった(平均12.0%、最終回12.4%)ので、世間的な評価は「大失敗」とされましたが、私にとっては見応えのある番組でした。

 良かった理由は次の通り。
 1. 著名ではない人物を主人公としたことによって、幕末〜明治期における市井の人の歴史観(自分たちの社会が劇的に変化することを望んでいないし、近しい人間が変化の舞台に身を投じることも望んでいない。だが変わってしまう社会に翻弄されかつ受け止め、自分たちなりに精一杯生きよう)が無理なく描かれていた。一方で歴史に名を残した人物たちの無名な時期を長く描いたことで、彼らは彼らで何者かになるために悩んでいた事実を示した。
 2. 脚本に工夫が凝らされていたので、1年間の長丁場ながら、番組が中弛みしなかった。作品が4分割され、それに合わせて主人公の位置づけを変えていった(1)吉田松陰の妹→2)久坂玄瑞の妻→3)高杉晋作の友人→4)楫取素彦の妻)。
 
 3. 井上真央さんの凛とした立ち振る舞い。
 
 4. 血みどろやドンパチ物の演出が少なかった。これは個人の好み。

【エッセイ】昨日の山登りで「これはまずいんじゃないか」と思ったこと

 2点あります。

 1) 乳幼児を連れて山登りをしている夫婦がちらほらいた。
 2) 持ち物や恰好からして明らかに準備不足な人がちらほらいた。

 まず1)について。とにかく、「乳幼児の安全が危ない」と思いました。乳幼児を前に背負うにしても後ろに背負うにしても、登山/下山の上下動は大きく、乳幼児がずり落ちてしまうのではないかと不安になりました。また、乳幼児のバランスを取るために親は両手をうまく使えません。親が体勢を崩した時に手を使うと、当然その時は乳幼児に意識が向きませんから、周りの石や木に乳幼児がぶつかってしまう可能性が高まります。まさか乳幼児が「今日は山登りに行きたい」と親に伝えたわけではないでしょうから、親がしたくて山登りに来るという判断が不安になります。

 次に2)について。「怪我や体調を崩したことを考えていない」のが怖くなりました。手ぶら、薄手の服装、華奢な靴、リュックサックなしで歩く人たちにしばしば出くわしました。山登り用の格好を一通り揃えている人の隣にそういう格好の人たちがいるのは不可思議でした。道中、自分たちが迷子になっているのが分からないままに山道を下っている人たちと出くわし、「地図も持っていない」と言われて唖然としました。流石に不安になったので、持っていた地図を渡しました。

 山登りが人気になって、老若男女が山に気軽に訪れることはとても良いことです。ただ、自分がかつて山登りをしていた経験からして、「山登りを楽に考えてると痛い目に遭う」と思ってしまいますので、上述の2点はまずいんじゃないかと思ってしまいました。

日本人の生活時間2010の感想

 NHK放送文化研究所が、5年に1度の頻度で「国民生活時間調査」という調査を行っています。「人びとの1日の生活を時間の面からとらえ、生活実態に沿った放送を行うのに役立てるためにNHKが1960年から5年ごとに実施しているもので、2010年調査が11回目でした。2011年頃、自分の生活で時間をどのように使っているかについて強い関心を持っていて、その時に買ったものを改めて読み直しました。調査結果のまとめを紹介しつつ、自分の感想を一部書きます。
 
 1. メディア利用
  1) テレビを見る人は微減したが、なお続く長時間視聴
   −若年層のテレビ視聴の減少…平均2時間を切る
    →それでも若年層の80%はテレビを見ているとはいえ、テレビの前にいるという習慣が減ってきているように思います。
   −高齢層のテレビ視聴の増加…平均5時間半を超す
    →仕事を辞めた後の父はいつもテレビの前にいました。

 2) インターネット・20〜30代の利用多し、高齢層もやや伸びている
   →私は毎日長時間ネットしています。高齢層もスマホで使い始めてる。

 2. 仕事と家事
  1) 朝と夜に広がる仕事時間帯
  2) 依然女性が長いものの、「女性減少」「男性増加」傾向
   −女性…平日も休日も4時間半
   −男性…平日は1時間切る、休日は1時間半
  3) 早めに帰宅し家事にも取り組む男30代−「子どもの世話」あり
   →休日に街を歩くと夫婦で子育てをしている光景をよく見るので、結構そんな気がする。

  4) 女30代は家事中心だが仕事にややシフト
   →主婦という生活形態もまだまだありつつ、特に女性に対して仕事と家庭の両立が奨励されています。特に女性に対して奨励されることには違和感を拭えませんが。。

 3. シニア世代の生活
  1) 60歳を境に大きく減少する仕事
  2) 70歳後半以降、急速に体力低下
  3) 仕事時間が減って、テレビとレジャーが大きく増加
   →仕事に費やされていた時間がテレビかレジャーに向けられているのは、特に父親の様子を見ていると実感。
  4) 高齢者の身近なメディアはテレビ、新聞、ラジオ
   →やっぱり御三家。ネットはまだまだ。

 4. 睡眠
  1) 睡眠時間はどの曜日も減少基調
  2) 平日(7:14)<土曜(7:37)<日曜(7:59)
   →睡眠時間の長さはこの順番のとおり。
  3) 早寝・早起きが進行
   →長らくの間10時寝5時半起き。

【エッセイ】「チャレンジの果てに」

 「チャレンジする」は「挑戦する」といった意味合いで使われる和製英語ですが、英単語"challenge"の本来の意味は"to refuse to accept that something is right, fair, or legal"や"to invite someone to compete or fight against you, or to try win something"です(いずれもLongmanによる定義)。アメリカの野球大リーグで審判の判定に不服なプレーがあった場合、各チームは1試合に最大2回のビデオ判定を要望することができますが、このことを"Challenge"と呼称するのは前者の定義に従ったものですね。また後者の定義からは"challenger"「挑戦者」が派生します。
 東芝の不適切会計で話題になった「チャレンジ」では、「目標達成に向けて頑張る」という本来の名目が、「過大な目標の達成を名目に経営トップから理不尽な叱責を受けていた」と第三者委員会に批判されました。「チャレンジ」は"challenge"の本来の意味"to refuse to accept that something is right, fair, or legal"を結果的に実践していたとも言えます。
 東芝は「チャレンジ」≠challengeの果てに我が身を貶める結果となりました。「これはまずいんじゃないか」と思いながらも、上層部の指示で不正を継続した従業員たちの心境を思うと、切ないですね。

【エッセイ】『深夜特急』を読み返し。

 沢木耕太郎『深夜特急』を読み返すと、次のような気持ちが湧いてきますね。
 
  1. 自分も訪れたことのある場所(香港、シンガポール、デリー、ロンドン等)での話は感情移入できて楽しめる。
  2. 旅は青年期(旅先で出会う何もかもに興奮する時期)、壮年期(旅にも慣れてきて、出会いに落ち着きをもって接する時期)、老年期(旅の終わりが見えてきて、どのように終えるかを考える時期)がある。
  3. 旅に出たくなる。

 そして『深夜特急』は沢木氏が26歳で旅してから、17年後に完結した本であることを知りました。「どうしてこんなに当時の出来事を覚えているのだろう」と不思議に感じていたのですが、この本は旅の出来事が熟成され、虚実がない混ぜで創造されたものなのです。たぶん。


【エッセイ】親の介護をどうするか。

 「仕事と介護の両立」をテーマにした会社のセミナーに先日出席しました。自分の家族で介護が必要な人は現在いないものの、心身に余裕のあるうちに一度くらいは考えておこうと思ったので。
 
 セミナーには自分よりも上の年代の社員(40〜50代)が5, 60人は参加していました。気楽に話を聞く私と違い、講師の話に真剣に耳を傾けている人ばかり。その様子を見て、「ああ、確かに親の介護って実際にある話だよな」と初めて認識しました(※1)。また自分は東京圏に暮らす一方で親は遠隔地に暮らしている場合には親の様子をあまり知ることができないので、いざ本当に介護が必要になった場合にどうしたらいいのか心配するのも理解できました。

 で、自分についても「親の介護、10年後には自分の話題になってきそうだな」と初めて認識しました。10年後には自分の両親は父78歳、母75歳となり、要介護認定の可能性が高まることも(※2)。父の両脚は随分細くなり、母の白髪は随分増えました。

 10年という期間は、「今すぐにやって来るほど近くはないが、想像できないほど遠くはない」期間だと感じます。東京オリンピックの5年後にはもう10年後。東京オリンピックの開催によって5年後が「2020年」として想像できるようになったこともあり、10年後は予見される未来に思えます。「とりあえず仕事をどうやっていくか」「結婚する相手はいるのか」などがここ数年の自分の関心事を占めていましたが、「親の介護をどうするか」は予見される未来における関心事項として念頭に浮かびました(※3)。

 ただ10年後に自分がどうすべきかは全然思い浮かびません。

 ※1 2012年に実施された総務省の調査結果は次のとおり。
  ・介護をしている人;557万人
  ・働きながら介護をしている人:240万人
  ・介護者の6割:40〜60歳
  ・介護離職者:年間10万人超

 ※2 65〜69歳までの人口構成比の要介護認定率は2.6%で、75〜79歳まででは13.8%に上昇する。

 ※3 2040年には、東京では要介護者が143万人増えて、411万人に達すると推定されています。人口動態統計上、ほぼ確定した未来。

【エッセイ】育児と仕事の両立に関する某企画を見学した感想

 育児と仕事の両立に関する某企画を見学した感想です。
 育児中でかつフルタイム仕事中の女性(20代-30代)と、管理職の人(40代-50代)との間でお互いの立場について対話を通じて内省を深める企画を見学した。
 その間、両腕を胸の前で組んでいる人が、男性は半数以上、女性は1人だった。偶然にも男女差がはっきりと見られた。「腕を組む」行為は、防御、権威、対話の拒否を示す非言語の意思表示だ。つまり彼らは対話の場にいて、話を聞く風でありながらも、根本では対話を拒んでいたことになる。ただ、腕を組んでいた人たちを批判する意図はない。きっと彼らは無意識に腕を組んでいたはず。普段から自分を強く見せる必要に迫られ、育児中の人に胸を開く心理的余裕は乏しいのだろう。
 また対話企画の前に、育児と仕事を両立してきた女性数人が話す経験談を聞き、非常な衝撃を受けた。今からせいぜい10-15年前に彼女たちが理不尽にも被ってきた、周囲の無知と不寛容には唖然とした。
 同年代の友人諸氏が育児に取り掛かるさまを見るにつけ、独身/世帯持ちに限らず、自分がまさに現役世代で、自分たちの社会観と取り組みが次世代の社会につながることを考えさせられる。日本的雇用システムの現状(「男子正社員のみ年功序列で定年まで,職務と対応しない,社員というメンバーシップに基づいて雇用する慣行」(大企業にとくに強く,中小企業で弱い))(川端望氏の表現を拝借)の緩やかな改変と、その現状によって副次的に生み出されている社会的不公正(正規社員と非正規社員の格差、男性と女性の格差を正当化)の改善に向けた道程はまだまだ遠い。が、そこは私たち現在世代が一歩一歩頑張っていくしかないね。

【エッセイ】英語辞書で学んだこと(4)

 英語辞書『20世紀クロノペディアhttp://amzn.to/1IgdoVX で学んだこと 4回目:英語の新語彙も大半は既存の語彙の組み合わせ。
 以下は辞書の転載。
 
「英語はどのような手法で20世紀にその語彙を拡大していったのだろうか。新しく語を生み出すには基本的に5つの型がある。1) 既存の語を新しい用法にすること、2) 既存の語や語の一部を結合させること、3) 既存の語を短くすること、4) 他の言語から借りてくること、5) 全く新しく造り出すこと。
 英語において群を抜いて一般的に行われている方法は、既存の語を結合するという2番目の方法である。この方法は主に2つの種類に分けられ、そのどちらも英語自体の歴史を持っている。2つないしそれ以上の語が結ばれて、別々に用いられているときの意味とは違ったものを意味するような形のもの(dirty dancing, dreadnought)、もう1つは現存する語に接頭辞や接尾辞を付け加えたもの(unbundled)である。しかし、20世紀の大きな特徴となっているのは混成語(blend)という独特の合成方法である。混成語を造るには、2つの語を単に並べてつなぐだけではだめである。例えばmotorとhotelでmotelになるように、最初の語の語尾が2つ目の語の語彙に溶け合うように重ね合わせるのである。
 (中略)語彙の拡大に最も努力を要しない方法は、既存の語に新しい用法を加えることである。その際、一般にはもとの語の意味に変化が招じることになる。…(中略)…新語全体でこの種を見積もると、10-15%あり、かなりの割合となっている。
 (中略)もし既存の語を短縮したければ、最も簡単な方法は語末を切り落とすことである。
 (中略)極端な方法としては、語頭の文字だけを残すというやり方もある。
 (中略)他言語からの借用は、20世紀以前の英語をとても豊かにしたのであるが、20世紀においては新語の約5%を占めている。
 (中略)何もないところから語彙を創り出すことは、新語の1%にも満たない」

 

ナルコレプシーに関する知識を更新。

 会社でのストレスチェックを契機として、自分の抱える睡眠障碍(ナルコレプシー)に関する知識を更新することができました。国(厚生労働省)の発表した報告とこれまでの断片的な知識とを照合して、知識を補完できてよかったです。
 あと、この頃(というかずっと?)、夜間に頻繁に目が覚める(そのたびに違う内容の夢を鮮明に見る)ことが気になり、この現象はナルコレプシーによるものかを長年世話になっている医者先生に相談したところ、然りであると即答されました。また理解が進んだな。

 以下は報告書の記載。この報告書は睡眠に関する包括的な報告書で、2014年に発行されました。
 夜間に十分な時間眠っているにもかかわらず、日中の眠気がひどい場合には過眠症が疑われる。…ナルコレプシー、…のように睡眠覚醒機構の機能異常により生じる一次性の過眠症…がある。

 出所:『健康づくりのための睡眠指針2014』、p.53

 ナルコレプシーは10歳代に発症する過眠症の典型であり、情動脱力発作を伴うナルコレプシーは、米国や西欧諸国の人口の0.02~0.18%で認められる。日本ではやや高い有病率(0.16~0.18%)が報告されている。体質性の睡眠障害では、特定の白血球の血液型(HLA-DR15)と関連しており、脳内のオレキシンという覚醒維持に関連した物質の低下が病態に関係していることがわかってきた。ナルコレプシーでは、急に睡魔におそわれて眠ってしまう睡眠発作と呼ばれる症状に加えて、…眠りぎわの睡眠麻痺や入眠時幻覚などが一緒に起こる特徴がある。

 出所:前掲書、p.58

【エッセイ】英語辞書で学んだこと(3)

 英語辞書『20世紀クロノペディアhttp://amzn.to/1IgdoVX で学んだこと 3回目:過去に生まれた概念は社会的に再生産(再利用)されることがある。
 以下は辞書の転載。
 
「表2:20世紀以前に作られた主な語
 flying machine(1736, 航空機), parachute(1785, パラシュート),
 aircraft(1850, 航空機), Communist(1858, 共産主義者),
 acid rain(1859, 酸性雨), commuter(1865, 通勤者),
 relativity(1876, 相対性原理), photograph(1877, 蓄音機),
 department store(1887, デパート), contract lens(1888, コンタクトレンズ)
 spaceship(1894, 宇宙船), automobile(1895, 自動車),
 feminism(1895, 男女同権主義), modern art(1895, 現代アート)
 motor car(1895, 自動車), car(1896, 自動車),
 photothesis(1898, 光合成), radioactive(1898, 放射性)」

 

【エッセイ】英語辞書で学んだこと(2)

 英語辞書『20世紀クロノペディアhttp://amzn.to/1IgdoVX で学んだこと 2回目:過去に生まれた概念は社会的に再生産(再利用)されることがある。
 以下は辞書の転載。
 
「人間社会の様々な活動や流行は、当然ながら、特定の10年間と完全に一致するものではないが、それでも、そうした活動や流行がそれを示す用語と結びつけられると、その用語が記録されたときに、その活動や流行も絶頂期にあったように思われがちである。例えば、融和政策(appeasement)といえば、本質的に1930年代の現象と考えられがちであり、確かに1930年代はこの語が今日持つ否定的意味合いがまとわり付き始めた時代であった。しかし実のところ、その概念は1920年代に始まったものである。同様に、冷たい戦争(Cold War)の典型的な表現である鉄のカーテン(iron curtain)は1920年代にさかのぼることができる。新しい語が(しばしば専門家だけが知っている専門用語として)埋もれたまま数十年間のんびりと過ごした後、突然注目されるようになることは少しも珍しいことではない。例えば、greenhouse effect(温室効果)は1920年代に造られたが、気候学者でない人たちが耳にするようになるのは、1980年代に入ってからのことである。また、実際には存在していない事物について語ることができるということも、人間の言葉の重要な特徴の1つとして心に留めておくべきである。H.G.Wellsが194年にatomic bomb(原子爆弾)について論じているものを読むと、いまだに戦慄を覚えるのもそのためである」

 
 注:ここで取り上げられている単語のいくつかについて。
 1) 融和政策(appeasement):ヒトラー率いるナチスドイツの軍備増強・領土拡張政策に対する、当時のイギリス首相ジョゼフ・チェンバレンが推進した外交方針(ナチスドイツの主張を受け入れる代わりにナチスドイツの侵攻を抑止させる)を総称したもの。
 2) 鉄のカーテン(iron curtain):1946年にイギリス政治家ウィンストン・チャーチルが講演で東西冷戦の始まりを称して使った言葉として有名。
 3) 温室効果(greenhouse effect):地球の気温を上昇させる効果として二酸化炭素(carbon dioxide)がよく取り上げられる。

【エッセイ】英語辞書で学んだこと(1)

 英語学習の一環で、ここ2年ほど『20世紀クロノペディア』 http://amzn.to/1IgdoVX という英語辞書を書き写して、知っている語彙を増やすことに取り組んでいました。この辞書は20世紀中に新出した語彙を時系列で編纂したもので、その語彙が初めて記録された年を規定するとともに、初出の例文を記載してあります。学んだことを紹介していくことにします。
 1回目は10年区切りで新出英語語彙の一覧(この辞書中で紹介されている区分)を紹介します。この辞書にもあるとおり、「単語は時代を写す鏡」だなと実感しました。

 表1:10年ごとに見る英語語彙の成長
 1900年代 自動車、航空機関係、無線技術、映画、心理学
 1910年代 戦争、航空機関係、映画、心理学
 1920年代 衣装・ダンス・若者文化、輸送関係、ラジオ、映画
 1930年代 戦争・軍拡、輸送関係、映画娯楽
 1940年代 戦争、戦争社会と国際関係、原子力、コンピュータ、宇宙
 1950年代 マスコミ関係、原子力、宇宙、コンピュータ、若者文化
 1960年代 コンピュータ、宇宙、若者文化・音楽、マスコミ関係、麻薬
 1970年代 コンピュータ、マスコミ関係、ビジネス、環境、差別排除
 1980年代 マスコミ、コンピュータ、財政・金融、環境、差別排除、若者文化、音楽
 1990年代 政治、マスコミ、インターネット

【エッセイ】欧州における11月11日は休戦記念日。

 朝の海外ニュースを何となく見ていると、英国BBCでは9月頃から11月上旬までどの人も胸に赤い花のバッジをつけていた。何の意味があるか調べる気持ちはないままに日々ニュースを見ていたところ、11月11日の午前11時、第一次世界大戦の戦死者を追悼するために2分間の黙祷が行われたことを伝えるBBCの報告を見て、「ああ、あの花はそのためのものなのか」ということを理解しました。
 あの赤い花は"poppy"(赤いヒナゲシ)で、欧州では赤いヒナゲシが戦死者追悼の象徴になっています。第一次世界大戦の主な戦場では赤いヒナゲシがよく育ったため、戦争とヒナゲシとの関連が意識されるようになりました。
 
 今年は第一次世界大戦が勃発してからちょうど100年にあたります。日本ではあまり話題になりませんが、欧州では、各国が遭遇した初めての国家総力戦(それまでに行われたあらゆる戦争よりも多くの死者を出した)であり、人々の心に今も深く刻み込まれているようです。
 
 後で知りましたが、日本では11月11日はポッキーの日だったらしいですね。まあ、欧州での11月11日(第一次世界大戦の休戦記念日)とは意味合いがだいぶ違いますね。

BBCの報告:Armistice Day: Final Tower poppy laid as UK honours fallen

【エッセイ】知識人の身の在り方

  (ぼわっとした話です)
  「『知識人』と称される人たちの言説には反権力、反文明、反米国のいずれかがその主張の根底にあるような気がする。大学でもそういう雰囲気ってある?」と後輩に尋ねたら、「そういうのは年齢が上になればなるほどありますよ」と返されたことがある。知識人という人が自分の言説を常に自己批判しながら作り直していく人と定義すれば、反対という立場に身を置き続けることが知識人の在り方として妥当なのかという疑問があります。あくまで現象の分析や検証をするために、(上述の言説の根底を汲むならば)反対(anti)ではなく非(non)の立場にあることがより適切な身の置き方ではなかろうか。

【エッセイ】スコットランドの住民投票に熱中。

 10月は主にBBCの特別報道"Scotland Decides"を見て、スコットランドの独立の是非を問う住民投票の趨勢を追い掛けることに熱中していました。大変興味深かったです。http://bbc.in/VOb0m4

 1) 結果について
 最後は王国を出ることの不安と不便が反対を後押ししたように見えたものの、一方で100万人以上が独立に賛成したことは決して軽視されないでしょう。スコットランド国民党(SNP)の主張が支持層に強く響いたことも見て取れました。スコットランドの人々の声をイギリスにおける民主政治にどのように届けるか。その手法が独立(賛成)か権限委譲(反対)かを問われ、最終的に後者が選ばれました。BBCの特別記事は「スコットランドの投票は終わったが、イギリス全体の統治の在り方を考え直すのはこれから始まる」と書いていて、今回の住民投票がもたらす影響はまたまだありますね。
 
 2) 争点について
 今回の住民投票で議論になった話題を日本に当てはめてみるとどういうことなんだろうと考えてみると、日本で起こり得ないとは言えない話題があることに悩まされました。a) 自治…大阪都構想がなかなか進まない大阪維新の会が日本政府に業を煮やして「大阪国独立だ!」と宣言。b) 大阪国になっても円を使うと主張する大阪に「日本国の通貨である円は使わせない」と日本政府が反論。c)軍事…沖縄が独立したら米軍基地を撤廃。日本政府は安全保障上のリスクが高まると反発。d)民族自決…(日本では民族問題の意識が乏しいけれど)沖縄や北海道で民族意識が勃興したら十分あり得る。

 3) 投票について
 「投票はやってみないと分からないな」と思わされました。大都市(グラズゴー、アバディーン)は賛成で、中小都市は軒並み反対。離れ小島(オークニー諸島)に開票結果が出て、反対67%にまず衝撃。反対が続いたところにアバディーンで賛成が勝ってまた衝撃。ある区では49.92対50.08の僅差で反対勝利に更に衝撃。なんだこの僅差は…と呆然。

 4) イギリスの成熟社会について
 スコットランドの人々が理性的かつ平和的に最後まで相手と議論を戦わせていたことに、民主主義政治体制の長年にわたる経験と人々の民主主義政治に対する信頼を感じました。総有権者の97%が事前に投票に申し込み、結果は85%超という投票率。また対立陣営へのネガティブキャンペーンもほとんど目にしませんでした。独立などというこんな大事、他国では血みどろの争いになってもおかしくないでしょう(実際に起こった国もちらほら思い浮かびます)。

 最後に
 今回の件で私も俄かスコットランドフリークになったので、いつかスコットランドに行ってみたくなりました。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(30)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。
 30回目は第98条(憲法の最高法規性、条約及び国際法規の遵守)です。
 憲法が国の法体系の頂点に存するもので、憲法の内容に反する法律などはすべて無効とされています。これが「○○は憲法に違反するので無効」という訴訟の根拠となるのでしょう。一方で、憲法は国家が自身の持つ権力を束縛することを国民に保障するもので、法律などは国家権力が秩序の維持や社会の発展を目的に国民に遵守させるものです。法律など憲法を除くものと憲法とは本来、別の軸に存在するもので、同系統のものとして捉えるべきではないように思います。憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法は「六法」と一まとめにされていますが、ある憲法学者(伊藤真)は「憲法とその他5種の法律」と捉えるべきではないかと主張しています。
 以下原文。
________
 第98条(憲法の最高法規性、条約及び国際法規の遵守)
  ,海侶法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(29)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 29回目は第97条(基本的人権の本質)です。
 第11条、第12条、第13条で記された基本的人権の尊重が本条で再び記されています。日本国憲法が日本国民に保障する基本的人権は永久不可侵性を持っているので、日本国憲法は最高法規性(国の法体系の頂点に存するという性格)を有しているとされています。

 以下原文。
________

 第97条(基本的人権の本質)
  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権理は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(28)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 28回目は第96条(憲法改正の手続、その公布)です。
 国民の認知度の低さとは裏腹に、第96条は憲法改変ゲームのルールを定めている重要な条項です。2013年の憲法記念日の頃に、憲法改正の手続を定めた条項がこの条項であると私は初めて知りました。一般の公教育を受けて育った日本国民はほとんど、2013年までこの条項の存在を知らなかったのではないでしょうか(少なくとも私は、中学校の社会の授業、高校の公民の授業で第96条について学んだ記憶がありません)。
 憲法改変ゲームのルールを変えるわけですから、その可否は慎重に取り扱うべきでしょう。第2次安倍政権が憲法改正の発議要件を緩和することに(少なからず)意欲を示しています。私は少なくとも現行憲法を改変すべきと主張する憲法学者(e.x.小林節氏)が、この条項の変更に強く反対している理由には耳を傾けるべきかと考えます。

 以下原文。
________

 第96条(憲法改正の手続、その公布)
  ,海侶法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
  憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(27)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 27回目は第92条(地方自治の基本原則)、第93条(地方公共団体の議会、長・議員等の直接選挙)、第94条(地方公共団体の権能)です。

 地方自治は、地方公共団体が行う自治行政であり、それは住民の意思に基いて、団体独自の立場で行わなければなりません。つまり、(1)団体自治の原則(国家の干渉を受けず、地方公共団体独自の立場で方針を決定し、運営する)と(2)住民自治の原則(地方公共団体はその住民の意思によって運営される)が地方自治の原則です。団体自治の原則は第93条、住民自治の原則は第94条に定めてあります。

 日本国憲法には地方自治の規定が原則として定めてあるだけで、具体的な決め事は法律に定めるとしています。ここでいう法律とは地方自治法を指します。なお大日本帝国憲法には地方自治の規定がありませんでした。

 以下原文。
________

 第92条(地方自治の基本原則)
  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
 第93条(地方公共団体の議会、長・議員等の直接選挙)
  |亙公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の準民が、直接これを占拠する。
 第94条(地方公共団体の権能)
  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(26)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 26回目は第91条(内閣の財政状況報告)です。
 
 この条文に基いて、毎年1月に召集される国会の本会議で財務大臣が財政状況について演説を行うほか、財政法第46条第1項に基いて、財務省が毎年「財政法第46条に基く国民への財政報告」がなされています。この報告がなされる頃に、日本の財政状況が報道されます。

 以下原文。
________

 第91条(内閣の財政状況報告)
  内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年1回、国の財政状況について報告しなければならない。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(25)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 25回目は第85条(国費支出及び国の債務負担)です。
 この条文を読むことで、2007年〜2009年、2010年〜2012年に発生した「ねじれ国会」(衆議院と参議院で多数派を占める政党が異なる状態)において、公債特例法案(≒赤字国債発行法案)が政局を生じやすい理由が分かりました。特例公債が発行されないと内閣は自身が提出した来年度の予算を執行できなくなるため、内閣が状況を変えるために国会(主に野党)と取引する状況になりやすいからです。

 国の財政では歳入の約半分を特例公債に依存していますが、特例公債を発行するためには公債特例法案の成立が必要です。特例公債法案は1年かぎりの特例法案で、翌年度も特例公債を発行するためには新たな特例公債法案を成立させる必要があります。

 ところが「国(≒政府)が債務を負担するには国会の議決に基くことを必要とする」ため、国会の一院(事実上参議院)が特例公債法案の成立に反対するかぎり、国は特例公債を発行することはできません。特例公債が発行されないと、内閣は自身が提出した来年度の予算を執行できません。

 内閣が国会に対して行える提案は内閣総辞職か衆議院の解散総選挙のどちらかですので、内閣が状況を打開するため、内閣総辞職か衆議院解散の見返りとして、国会が公債特例法案の成立に同意することがあります(2012年には、11月16日に衆議院が解散された後、2013年度の特例公債法案が11月26日に成立しました)。

 以下原文。
________

 第85条(国費支出及び国の債務負担)
  国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(24)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 24回目は第84条(租税法律主義)です。
 租税とは、国や地方自治体が必要な経費を支払うため、国民から強制的に徴収する収入です。国会は政府の財政を適切に監督するために、その収入(租税)の確保にも国会の許可が必要であることが定められています。本条は前条(財政処理の要件)と絡めて読むことができます。

 以下原文。
________

 第84条(租税法律主義)
  あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(23)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 23回目は第83条(財政処理の要件)です。
 もともと議会は、国家(行政)権力から国民が不当な負担をさせられないよう、国の財政を適切に監督するために生じました。

 以下原文。
________

 第83条(財政処理の要件)
  国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(22)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 22回目は第81条(最高裁判所の違憲立法審査権)です。
 最高裁判所は、「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限」を有します。違憲立法審査権は立法権力の過剰な行使を抑制するための、裁判所(司法権)が国会(立法権)に対して有する権利です。日本は付随的違憲審査制(通常の裁判所が具体的な事件において適用すべき法令の違憲性を審査する)を採用しており、アメリカで採用されている制度と同様です。意見の法令を適用することに対する個人の権利保護に重点を置く点で私権保障型とも言われます。
 一方ドイツやイタリアは抽象的違憲審査制(特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な事件とは関係なく、抽象的に法令や国家行為が意見であるかどうかを審査する)を採用しています。意見の法令を排除することによって法体系の整合性を確保することに重点を置く点で憲法保障型とも言われます。

 以下原文。
________

 第81条最高裁判所の違憲立法審査権)
  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(21)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 21回目は第76条(司法権と裁判所、特別裁判所の禁止と行政機関の終審的裁判の禁止、裁判官の独立)です。
 第1項は裁判所の司法権独占(司法権の独立。司法権とは法律を適宜に用いて具体的に訴訟を解決する国家作用をいう)、第2項は特別裁判所(最高裁判所を頂点とする裁判所組織の系列外に設けられ、特定の身分や種類の事件の裁判をする場所)や行政機関による終審の禁止、第3項は裁判官の職権独立を定めています。

 以下原文。
________

 第76条(司法権と裁判所、特別裁判所の禁止と行政機関の終審的裁判の禁止、裁判官の独立)
  ,垢戮道碧仝△蓮∈嚢盧枷十蟲擇嗚[Г猟蠅瓩襪箸海蹐砲茲蠕瀉屬垢覯宍藝枷十蠅紡阿垢襦
  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
本ブログについて
Shozo MIYATAが執筆しています。本ブログの内容は所属組織と無関係な、個人的な見解です。
読書などの記録
Archives
記事検索
  • ライブドアブログ