今回のアメリカ大統領選挙については、「トランプの言ってることが無茶苦茶だし、流石に今回はヒラリーだろ…」と思っていました。なのでアメリカ大統領選挙に共和党のトランプが当選したことには私も不愉快な気持ちになりました。

 私たちの多くがトランプの当選に衝撃と不快感を覚えたのは、アメリカ合衆国の大統領はアメリカ合衆国民を体現する存在であり、同時に全世界の指導者でもあると無意識に私たちは想像していて(その理由は、アメリカ合衆国が一つの国家であると同時に一つの世界システムでもあるからでしょう)、後者の象徴として相応しいとは素直に感じられない人物が民主的に選出されたことに困惑したからなのだろうと考えています。

 今回の選挙では、(1)(州全体の勝ち負けに関係なく)大都市の選挙区はヒラリー勝利、(2)(州全体の勝ち負けに関係なく)農村部および中小都市の選挙区はトランプ勝利、という投票結果を示しました。結局、グローバル市場の恩恵を感じられない(または実際に恩恵を受けていない)人が「世界の発展?知るか。俺たちの生活(=俺たちにとっての世界)を何とかしてくれよ、くそったれ」と、投票行動によって現状に異議を申し立てたとみなすことができるのでしょう。これはBrexit国民投票におけるイングランド地方の投票結果(ロンドンは残留、他全ての地域は離脱)と軌を一にします。

 なお、「アメリカ合衆国民の多様性と複雑性を把握することは本当に可能なのだろうか」という点については、私は疑問を覚えています。というのも、アメリカの外にいる私たちが見聞するアメリカはそもそも国際的で(メディアでも人々でも)、アメリカの中で暮らすアメリカ人はそもそも私たちのフィルターに入ってきません。住む世界があまりにも違うので、彼らと接することはありません。Facebookのフィードも来ませんしね。会うことのない他者に対する無知と偏見を解消することができるとは、私は素直に思えずにいます。

 最後に、トランプの当選後に、あるFacebookの投稿(友人のアメリカ人夫。オハイオ州出身)を読み、「現在、アメリカの農村部および中小都市ではそもそも生活向上のための努力を続けることが難しく、たとえ本人はできる限りの努力をしたとしても、その苦境から抜け出すことは困難である」ことが感じられ、悲しくなりました。また、「アメリカ各地の"Diner"(アメリカにおける地元の食堂)を巡って、アメリカ人の本音を聞く」というドキュメンタリー番組を観て、農村部や中小都市ではトランプ支持者が大半であること、また支持政党に関係なく、アメリカ人の多くが「現在の苦境から決して抜け出せない社会構造に絶望し、反旗を翻そうとしている」ことがよく分かりました。当然、大統領選挙が終わった後の理解ではありますが、こういう人たちがアメリカのいたるところに暮らしているのなら、トランプorサンダースが熱狂的な支持を集めたのも十分理解できました。