日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 25回目は第85条(国費支出及び国の債務負担)です。
 この条文を読むことで、2007年〜2009年、2010年〜2012年に発生した「ねじれ国会」(衆議院と参議院で多数派を占める政党が異なる状態)において、公債特例法案(≒赤字国債発行法案)が政局を生じやすい理由が分かりました。特例公債が発行されないと内閣は自身が提出した来年度の予算を執行できなくなるため、内閣が状況を変えるために国会(主に野党)と取引する状況になりやすいからです。

 国の財政では歳入の約半分を特例公債に依存していますが、特例公債を発行するためには公債特例法案の成立が必要です。特例公債法案は1年かぎりの特例法案で、翌年度も特例公債を発行するためには新たな特例公債法案を成立させる必要があります。

 ところが「国(≒政府)が債務を負担するには国会の議決に基くことを必要とする」ため、国会の一院(事実上参議院)が特例公債法案の成立に反対するかぎり、国は特例公債を発行することはできません。特例公債が発行されないと、内閣は自身が提出した来年度の予算を執行できません。

 内閣が国会に対して行える提案は内閣総辞職か衆議院の解散総選挙のどちらかですので、内閣が状況を打開するため、内閣総辞職か衆議院解散の見返りとして、国会が公債特例法案の成立に同意することがあります(2012年には、11月16日に衆議院が解散された後、2013年度の特例公債法案が11月26日に成立しました)。

 以下原文。
________

 第85条(国費支出及び国の債務負担)
  国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。