2013/5/19 2回目読了。
 政治哲学者のマイケル・サンデル(彼は共同体主義者と括られる)による講義録。2010年のベストセラー。

 第1章 イントロダクション
 正義に関する3つのアプローチがある。これから3つのアプローチの強みと弱みを探る。
  1) 幸福の最大化―功利主義
  2) 自由の尊重―リバタリアンと公正派
  3) 美徳の涵養―共同体主義

 第2章 最大幸福原理
 1) ジェレミー・ベンサムの功利主義―美徳の至高の原理は幸福、すなわち苦痛に対する快楽の割合(=「効用」)を最大化することだ。
  a) 功利主義への反論その1:功利主義は個人の権利を尊重しない。
  b) 功利主義への反論その2:すべての価値を「効用」という一つの価値の共通通貨でとらえることはできない。
 2) ジョン・スチュワート・ミルの功利主義―人間は他人に危害を及ぼさないかぎり、自分の望むいかなる行動をしようとも自由であるべきだ。
  a) 功利主義への反論1への反論:効用は個別の問題ごとにではなく、長期的観点から最大化すべきだ。長い目で見れば、個人の自由を尊重することが人間の幸福を最大化することにつながる。
  b) 功利主義への反論2への反論:人生の究極の目的は人間としての能力を完全かつ自由に発展させることだ。功利主義者は質の高い快楽と低い快楽を区別できる。
  c) サンデルの再反論:ミルは、あらゆるものを快楽と苦痛による大雑把な計算に還元してしまうという避難から功利主義を救っている。だがそれには、効用そのものとは無関係な人間の尊厳や人格という道徳的理念に訴えるしかなかったのだ。

 第3章 私は私のものか?―リバタリアニズム(自由至上主義)
 1) リバタリアンの中心的主張:どの人間も自由への基本的権利―他人が同じことをする権利を尊重するかぎり、みずからが所有するものを使って、みずからが望むいかなることも行うことが許される権利―を有する。
 2) 最少国家:リバタリアンは近代国家が一般に制定している3つのタイプの政策や法律を拒否する。
  a) パターナリズム(父親的温情主義)の拒否
  b) 道徳的法律の拒否
  c) 所得や富の再分配の拒否
 3) 自由市場の哲学:ロバート・ノージックはリバタリアンの原理を哲学面から擁護し、分配の公正というよく知られた理念への疑問を提起した。
 4) サンデルの反論:自己所有権(自分を所有しているのは自分自身だという考え)は、選択の自由をめぐるさまざまな論議のなかに姿を現す。自分の体、命、人格の持ち主が自分自身ならば、それを使って何をしようとも(他人に危害を及ぼさないかぎり)自由なはずだ。こうした考え方の魅力にもかかわらず、その合意するところすべてが簡単に容認されるわけではない。
 
 第4章 雇われ助っ人―市場と倫理
 ・自由市場で我々が下す選択はどこまで自由なのか
 ・市場では評価されなくても、金では買えない美徳やより高級なものは存在するのか
  事例 1) 戦場で戦う行為 2) 子どもを産む行為

 第5章 重要なのは動機―エマニュエル・カント
 1) カント:人間は理性的な存在であり、尊厳と尊敬に値する。この考えに基づいて、正義と道徳を自由と結び付けるアプローチを勧める。
 2) 自律:自然の命令や社会的な因習ではなく、自分が定めた法則に従うこと。この能力が人格と物を隔てている。
 3) カントの思想で覚えておくべき対比
  a) 対比その1(道徳):義務 対 傾向性
  b) 対比その2(自由):自律 対 他律
  c) 対比その3(理性):定言命法 対 仮言命法
  d) 対比その4(観点):英知界 対 感性界
 4) カントの道徳哲学を現実の問題にどのように適用したかの例―セックス、嘘、政治

 第6章 平等をめぐる議論―ジョン・ロールズ
 1) ロールズ:正義とは何かを考えるためには、平等の初期状況において人びとがどのような原理に同意するかを問う必要がある。
 2)ロールズの思考実験:「無知のベール」を被った人びとが社会の原理原則を選ぶために集まるとすると、どのような原理原則が選ばれるだろうか?
  →仮説的契約からは、2種類の正義の原理が導き出される。
   a) 第一原理:言論の自由や信教の自由といった基本的自由をすべての人に平等に与える
   b) 第二原理:社会で最も不遇な立場にある人びとの利益になるような社会的・経済的不平等のみを認める
   
 第7章 アファーマティブ・アクションをめぐる論争
 論争の中心は1) 過去の過ちを補償する 2) 多様性を保証する。
 
 第8章 誰が何に値するのか?―アリストテレス
 1) アリストテレスの政治哲学の中心
  a) 正義は目的にかかわる。正しさを定義するには、問題となる社会的営みの「目的因(目的、最終目標、本質)」を知らなければならない。
  b) 正義は名誉にかかわる。ある営みの目的因について考える―あるいは論じる―ことは、少なくとも部分的には、その営みが称賛し、報いを与える美徳は何かを考え、論じることである。
 2) アリストテレスにとって、正義とは人びとに自分に値するものを与えること、一人ひとりにふさわしいものを与えることを意味する。
 3) アリストテレスにとって政治の目的は、目的にかかわらず中立的な権利の枠組みを構築することではない。善き市民を育成し、善き人格を育成することなのだ。

 第9章 たがいに負うものは何か?―忠誠のジレンマ
 事例

 第10章 正義と共通善
 この本のまとめ。
 1) 著者:「正義には美徳を涵養することと共通善について判断することが含まれる」という立場を支持する。
 2) 共通善にもとづく政治のテーマのいくつか
  a) 市民権、犠牲、奉仕
  b) 市場の道徳的限界
  c) 不平等、連帯、市民道徳
  d) 道徳に関与する政治