【エッセイ】英語辞書で学んだこと(2)

 英語辞書『20世紀クロノペディアhttp://amzn.to/1IgdoVX で学んだこと 2回目:過去に生まれた概念は社会的に再生産(再利用)されることがある。
 以下は辞書の転載。
 
「人間社会の様々な活動や流行は、当然ながら、特定の10年間と完全に一致するものではないが、それでも、そうした活動や流行がそれを示す用語と結びつけられると、その用語が記録されたときに、その活動や流行も絶頂期にあったように思われがちである。例えば、融和政策(appeasement)といえば、本質的に1930年代の現象と考えられがちであり、確かに1930年代はこの語が今日持つ否定的意味合いがまとわり付き始めた時代であった。しかし実のところ、その概念は1920年代に始まったものである。同様に、冷たい戦争(Cold War)の典型的な表現である鉄のカーテン(iron curtain)は1920年代にさかのぼることができる。新しい語が(しばしば専門家だけが知っている専門用語として)埋もれたまま数十年間のんびりと過ごした後、突然注目されるようになることは少しも珍しいことではない。例えば、greenhouse effect(温室効果)は1920年代に造られたが、気候学者でない人たちが耳にするようになるのは、1980年代に入ってからのことである。また、実際には存在していない事物について語ることができるということも、人間の言葉の重要な特徴の1つとして心に留めておくべきである。H.G.Wellsが194年にatomic bomb(原子爆弾)について論じているものを読むと、いまだに戦慄を覚えるのもそのためである」

 
 注:ここで取り上げられている単語のいくつかについて。
 1) 融和政策(appeasement):ヒトラー率いるナチスドイツの軍備増強・領土拡張政策に対する、当時のイギリス首相ジョゼフ・チェンバレンが推進した外交方針(ナチスドイツの主張を受け入れる代わりにナチスドイツの侵攻を抑止させる)を総称したもの。
 2) 鉄のカーテン(iron curtain):1946年にイギリス政治家ウィンストン・チャーチルが講演で東西冷戦の始まりを称して使った言葉として有名。
 3) 温室効果(greenhouse effect):地球の気温を上昇させる効果として二酸化炭素(carbon dioxide)がよく取り上げられる。

【エッセイ】英語辞書で学んだこと(1)

 英語学習の一環で、ここ2年ほど『20世紀クロノペディア』 http://amzn.to/1IgdoVX という英語辞書を書き写して、知っている語彙を増やすことに取り組んでいました。この辞書は20世紀中に新出した語彙を時系列で編纂したもので、その語彙が初めて記録された年を規定するとともに、初出の例文を記載してあります。学んだことを紹介していくことにします。
 1回目は10年区切りで新出英語語彙の一覧(この辞書中で紹介されている区分)を紹介します。この辞書にもあるとおり、「単語は時代を写す鏡」だなと実感しました。

 表1:10年ごとに見る英語語彙の成長
 1900年代 自動車、航空機関係、無線技術、映画、心理学
 1910年代 戦争、航空機関係、映画、心理学
 1920年代 衣装・ダンス・若者文化、輸送関係、ラジオ、映画
 1930年代 戦争・軍拡、輸送関係、映画娯楽
 1940年代 戦争、戦争社会と国際関係、原子力、コンピュータ、宇宙
 1950年代 マスコミ関係、原子力、宇宙、コンピュータ、若者文化
 1960年代 コンピュータ、宇宙、若者文化・音楽、マスコミ関係、麻薬
 1970年代 コンピュータ、マスコミ関係、ビジネス、環境、差別排除
 1980年代 マスコミ、コンピュータ、財政・金融、環境、差別排除、若者文化、音楽
 1990年代 政治、マスコミ、インターネット

2014年本棚卸

 2014年の本棚卸をしました。

 【結果】
  1. 読んだ冊数は164冊で、2013年(235冊)と比べて91冊減りました。
  2. 佐藤優さんの本を熱心に読みました。
  3. 今年読んだ本の中で最も強く印象に残った本はドナルド・キーンさんの『明治天皇』(全4巻)です。

 本棚卸の詳細は記事の続きへ。

 【過去本棚卸の結果】
  1. 2008年本棚卸
  2. 2009年本棚卸
  3. 2010年本棚卸
  4. 2011年本棚卸
  5. 2012年本棚卸
  6. 2013年本棚卸
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【エッセイ】欧州における11月11日は休戦記念日。

 朝の海外ニュースを何となく見ていると、英国BBCでは9月頃から11月上旬までどの人も胸に赤い花のバッジをつけていた。何の意味があるか調べる気持ちはないままに日々ニュースを見ていたところ、11月11日の午前11時、第一次世界大戦の戦死者を追悼するために2分間の黙祷が行われたことを伝えるBBCの報告を見て、「ああ、あの花はそのためのものなのか」ということを理解しました。
 あの赤い花は"poppy"(赤いヒナゲシ)で、欧州では赤いヒナゲシが戦死者追悼の象徴になっています。第一次世界大戦の主な戦場では赤いヒナゲシがよく育ったため、戦争とヒナゲシとの関連が意識されるようになりました。
 
 今年は第一次世界大戦が勃発してからちょうど100年にあたります。日本ではあまり話題になりませんが、欧州では、各国が遭遇した初めての国家総力戦(それまでに行われたあらゆる戦争よりも多くの死者を出した)であり、人々の心に今も深く刻み込まれているようです。
 
 後で知りましたが、日本では11月11日はポッキーの日だったらしいですね。まあ、欧州での11月11日(第一次世界大戦の休戦記念日)とは意味合いがだいぶ違いますね。

BBCの報告:Armistice Day: Final Tower poppy laid as UK honours fallen

【エッセイ】知識人の身の在り方

  (ぼわっとした話です)
  「『知識人』と称される人たちの言説には反権力、反文明、反米国のいずれかがその主張の根底にあるような気がする。大学でもそういう雰囲気ってある?」と後輩に尋ねたら、「そういうのは年齢が上になればなるほどありますよ」と返されたことがある。知識人という人が自分の言説を常に自己批判しながら作り直していく人と定義すれば、反対という立場に身を置き続けることが知識人の在り方として妥当なのかという疑問があります。あくまで現象の分析や検証をするために、(上述の言説の根底を汲むならば)反対(anti)ではなく非(non)の立場にあることがより適切な身の置き方ではなかろうか。

【旅行記】10/4-12 九州旅行

 10/4-12, 九州地方の北部各県(長崎県・佐賀県・熊本県・大分県・福岡県)と本州の山口県を旅行してきました。今回の旅で一番感じたことは「地方の都市やその周辺には十分な魅力がある。だけれどもヒト・モノ・カネ・情報は世界都市である東京とその周辺に集まり続けている。東京とその周辺ではこれらの資源が過剰にありすぎて、有効に使うことができなくなってきている(有効に使わなくても十分な都市機能を果たしてしまう)。ヒト・モノ・カネ・情報の東京への一極集中はいよいよ限界に達しつつあるのではないか」でした。
 
 旅の間に強く印象に残った場面を取り急ぎ紹介します。

 1) 熊本県の阿蘇山とその麓にある平原。雄大な姿に圧倒。
裏千里











 2) 大分県の杵築市に残る城下町。地元の子どもたちが学校から下校中。
杵築














 3) 佐賀県で食べた、佐賀牛の鍋汁を使った雑炊。旨過ぎ。
佐賀牛雑炊











 4) 福岡県と山口県を結ぶ関門橋。海底トンネルを徒歩で通過。
関門橋

【エッセイ】スコットランドの住民投票に熱中。

 10月は主にBBCの特別報道"Scotland Decides"を見て、スコットランドの独立の是非を問う住民投票の趨勢を追い掛けることに熱中していました。大変興味深かったです。http://bbc.in/VOb0m4

 1) 結果について
 最後は王国を出ることの不安と不便が反対を後押ししたように見えたものの、一方で100万人以上が独立に賛成したことは決して軽視されないでしょう。スコットランド国民党(SNP)の主張が支持層に強く響いたことも見て取れました。スコットランドの人々の声をイギリスにおける民主政治にどのように届けるか。その手法が独立(賛成)か権限委譲(反対)かを問われ、最終的に後者が選ばれました。BBCの特別記事は「スコットランドの投票は終わったが、イギリス全体の統治の在り方を考え直すのはこれから始まる」と書いていて、今回の住民投票がもたらす影響はまたまだありますね。
 
 2) 争点について
 今回の住民投票で議論になった話題を日本に当てはめてみるとどういうことなんだろうと考えてみると、日本で起こり得ないとは言えない話題があることに悩まされました。a) 自治…大阪都構想がなかなか進まない大阪維新の会が日本政府に業を煮やして「大阪国独立だ!」と宣言。b) 大阪国になっても円を使うと主張する大阪に「日本国の通貨である円は使わせない」と日本政府が反論。c)軍事…沖縄が独立したら米軍基地を撤廃。日本政府は安全保障上のリスクが高まると反発。d)民族自決…(日本では民族問題の意識が乏しいけれど)沖縄や北海道で民族意識が勃興したら十分あり得る。

 3) 投票について
 「投票はやってみないと分からないな」と思わされました。大都市(グラズゴー、アバディーン)は賛成で、中小都市は軒並み反対。離れ小島(オークニー諸島)に開票結果が出て、反対67%にまず衝撃。反対が続いたところにアバディーンで賛成が勝ってまた衝撃。ある区では49.92対50.08の僅差で反対勝利に更に衝撃。なんだこの僅差は…と呆然。

 4) イギリスの成熟社会について
 スコットランドの人々が理性的かつ平和的に最後まで相手と議論を戦わせていたことに、民主主義政治体制の長年にわたる経験と人々の民主主義政治に対する信頼を感じました。総有権者の97%が事前に投票に申し込み、結果は85%超という投票率。また対立陣営へのネガティブキャンペーンもほとんど目にしませんでした。独立などというこんな大事、他国では血みどろの争いになってもおかしくないでしょう(実際に起こった国もちらほら思い浮かびます)。

 最後に
 今回の件で私も俄かスコットランドフリークになったので、いつかスコットランドに行ってみたくなりました。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(最終回)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いてきました。今回は最終回です。

 最終回は一連の条文を書写したことを通じて得た感想です。

 ・日本国憲法は総体としてよく出来ている(でも何が良く出来ているのかは分からないので、印象の域を出ない)。

 ・前文と第9条はやはり疑問。自己の安全を他人に委ねる姿勢にはどうしても首肯しがたい。

 ・憲法の規定が国の立法・行政・司法の実務に明確に影響を与えている。これこそ当たり前か。

 ・日本国民の大半が現行憲法の条文と内容をほとんど知らないのに、その憲法を変える/変えないと議論するのは不毛。変える派も変えない派もその主張で飯を食わないといけないとは言え(むしろ飯を食っているのだからこそか)、どちらももう少し真面目にやれ。

 ・現行憲法を改変するのならば、超党派で合意の取れた憲法案が国民に提示されて、ほとんど大多数の国民が賛成するような内容となるのが、国民の(不毛な)分断を防ぐためにも良いと思う。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(31)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。

 31回目は第99条(憲法尊重擁護の義務)です。

 「天皇…国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」は憲法尊重擁護が義務付けられています。一方で第99条は国民の憲法擁護義務については触れられておらず、憲法の基本理念を否定する人々の言論・集会・結社の自由も日本国憲法では保障しています。日本国憲法では、「憲法の敵」「自由の敵」にも憲法が保障する自由を認め、そのうえでなお守られるべき自由こそが本当の自由であるという古典的な自由主義の考え方に立っています。

 以下原文。
________
 第99条(憲法尊重擁護の義務)
  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

【エッセイ】日本国憲法を書写した感想(30)

 日本国憲法の書写を通じた感想(憲法学説や実務に基づくものではありません)を断続的に書いています。
 30回目は第98条(憲法の最高法規性、条約及び国際法規の遵守)です。
 憲法が国の法体系の頂点に存するもので、憲法の内容に反する法律などはすべて無効とされています。これが「○○は憲法に違反するので無効」という訴訟の根拠となるのでしょう。一方で、憲法は国家が自身の持つ権力を束縛することを国民に保障するもので、法律などは国家権力が秩序の維持や社会の発展を目的に国民に遵守させるものです。法律など憲法を除くものと憲法とは本来、別の軸に存在するもので、同系統のものとして捉えるべきではないように思います。憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法は「六法」と一まとめにされていますが、ある憲法学者(伊藤真)は「憲法とその他5種の法律」と捉えるべきではないかと主張しています。
 以下原文。
________
 第98条(憲法の最高法規性、条約及び国際法規の遵守)
  ,海侶法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
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